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ジリリリリッ
そこに、玄関から電話の呼び出し音。家主のメトロな思想で、我が家の電話はダイヤル式の黒電話だ。
俺が居間の内廊下へと開け放たれた襖を見やると、廊下を神無ちゃんが横切った。
それから呼び出し音が止んだので、電話は神無ちゃんが取ったのだろう。
俺はそう把握すると、再び庭へと向き直る。
煙草の先を見やると、火がもうフィルターに達していた。
灰皿の底に煙草の火をこすりつけ、二本目を吸おうとパーカーのポケットから煙草の箱を取り出す。
「大次さん」
ライターを着火させた時に、神無ちゃんが居間へと入ってきた。
「どうしたんだ?」
呼ばれた大次は神無ちゃんにそう尋ねる。
「西の山の麓に住む老夫婦から依頼の電話が来ました」
俺は神無ちゃんの返答に、くわえた煙草の先端に近付けたライターの火を止める。
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