#1 十年後

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ジリリリリッ そこに、玄関から電話の呼び出し音。家主のメトロな思想で、我が家の電話はダイヤル式の黒電話だ。 俺が居間の内廊下へと開け放たれた襖を見やると、廊下を神無ちゃんが横切った。 それから呼び出し音が止んだので、電話は神無ちゃんが取ったのだろう。 俺はそう把握すると、再び庭へと向き直る。 煙草の先を見やると、火がもうフィルターに達していた。 灰皿の底に煙草の火をこすりつけ、二本目を吸おうとパーカーのポケットから煙草の箱を取り出す。 「大次さん」 ライターを着火させた時に、神無ちゃんが居間へと入ってきた。 「どうしたんだ?」 呼ばれた大次は神無ちゃんにそう尋ねる。 「西の山の麓に住む老夫婦から依頼の電話が来ました」 俺は神無ちゃんの返答に、くわえた煙草の先端に近付けたライターの火を止める。
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