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俺が一口吸って吹く時には、大次は再び歩き出していた。
俺もその後に続く。
会話が終われば、雑木林を満たすのは俺と大次の足音のみ。
それ以外は鳥のさえずりも、木々のざわめきも、昆虫の羽音すら聞こえない。
まるで、生きているのは俺達二人しかいないように、ここいら一帯が死んでいた。
当然だ。
悪霊が巣くっているこの地域では、畜生や昆虫、樹木ですら、生命を吸い取られないように息を潜めている、もしくは他の地域へと避難しているのだから。
今じゃ風でさえ、生き物のように止んでいる。
例え廃墟の中にいたとしても、ここまで静かではないであろう。
もっとわかりやすく例えるなら、この雑木林一帯の空間が、外の世界と隔離されている。
そんな錯覚ですら、事実のように思えてきた。
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