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洋大はただ茫然と、『九尾』の少女は寝ぼけているかのように半分閉じた目で、二人は互いに互いを見詰めていた。
悪霊がいなくなった森には風が吹き抜け、木々はざわめく。
空には小鳥が戻っており、喜びを表すかのように独唱をしている。
「……………」
「……………」
森に時流が戻ったと言うのに、この二人がいる広場だけが止まったままであった。
二、三分ほど経ったぐらいであろうか、だんだんと頭が冴えてきた少女はハッとする。
「!!」
それから、何かが弾けたかのような、座った状態から飛び跳ねるように立ち上がる。
その際、地面に不規則な紋様を描いていた黒髪が背中にふぁさ、と広がった。
「あっ、おい……」
少女が逃げると思った洋大はどこかへと旅立っていた意識を呼び戻して少女に手を伸ばすが、少女はそんな素振りを見せずに洋大を射るような眼で睨みつけてきた。
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