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ちゅっ
少年が振り向いた瞬間、彼のそれに、少女は自分の唇を重ねた。
少年は驚きに目を見開いて、少女は静かに目を閉じている。
しばらくして、少女が重ねた唇をそっと離した。
「これは今日遊んでくれたお礼だよ♪ 後、」
少年は少女に何かを手に握らされる。
「これは約束の証♪ ぜったいになくしちゃダメだからね」
最後の言葉を強く言って、少女は少年から逃げるように森へと走り出した。
しかしすぐに止まり、おもむろに振り返る。
「よーだい。ばいばい」
少女は微笑み――本人にその気はないのだろうが、妖しく見える微笑みを浮かべて少年に別れを告げた。
そして、少年が向かっていた方向とは真逆の森へと走り去る。
少年はただ茫然と、少女がその夢幻のような姿のように消えていった薄暗い森を、いつまでも眺めていた。
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