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悪戯に笑って1階への階段を降りて行く。そういえば彼は名前を呼ばない。昨日はマグナに対して「ニンゲン」、アメルは「オンナ」、ネスティは「メガネ」だった。フォルテと、彼の相棒であるケイナの呼称はまだ聞いていないが、たぶん名前で呼んでいないだろう。
では自分は?
「黒髪」ではケイナとかぶってしまう。「着物オンナ」でもそうだ。彼女と自分は外見の共通点が多い。
自分だけの特徴と言えば、羽衣くらいだろうか?「ヒラヒラオンナ」と呼ばれるのは勘弁してほしい。捉え方によっては「軽い女」みたいだ。
そんな他愛ないことを考えながら、朔夜も階段を降りて行った。
「起きなかっただろう?」
食堂に入って一番にかけられた声がコレ。苦笑して頷くと、声の主であるネスティは大きな溜め息を吐いた。
「昨日の今日で主殿もお疲れなのでしょう。」
「あいつの場合は普段からアレだ。」
疲れたような声にクスクスと笑って、キッチンへ向かう。
そろそろ降りてくるだろうマグナ以外のメンバーの食事を用意するためだ。
「パンの方はどうです?」
声を掛けると、オーブンと睨めっこしていた少女――アメルがこちらを振り返る。それに合わせて彼女の亜麻色の長い髪がふわりと舞った。
「もうすぐ焼けますよ。出来ている分は並べちゃいましょうか。あ、サクヤさん、そこの大皿取ってくれますか?」
「こちらですか?」
食器棚にあった大皿を渡せば「ありがとうございます」と言って微笑う。朔夜もアメルの隣りに立ち、朝食の支度を進める。
2人が互いに名乗り合ったのは小一時間ほど前。常日頃から起床時間の早い朔夜は、朝食の支度をしようとキッチンへ向かった。すると、同じことを考えていたらしいアメルと遭遇。
どちらからともなく「一緒に作ろう」と声を掛け、2人で朝食作りを始めたのだ。
「あら、早いわねぇアナタたち。感心感心♪」
「君も見習ったらどうだ?ミモザ。」
私が起こしに行くまで寝ているつもりだっただろう?
「おはようございます。ギブソン先輩、ミモザ先輩。」
真っ先に挨拶したネスティにミモザとギブソンが「おはよう」と笑って返す。
ミモザは丸眼鏡に肩までの茶髪の女性。ギブソンは軽くウェーブがかかった金髪の男性。
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