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「主殿、今です!」
呆然としている自分たちを叱咤するような声に我に返り、マグナはアメルの手を掴んで走り出す。けれど、彼女がそれを拒んだ。
「ダメ…!ロッカやリューグ…おじいさんがっ…!」
「狙われてンのはテメェなんだぞッ!?さっさと走りやがれ!!」
マグナの護衛獣である悪魔のバルレルが苛立たしそうに怒鳴るが、それでも頑として譲らない。
「アメル!」
聞こえた声にハッと顔を上げると、心配していた三人がこちらに駆けてきていた。
「アメル、無事か!?」
「お前さんたちがアメルを守ってくれたのか?」
「まぁ、一応はな。」
フォルテが肩をすくめつつ答えると、アメルの祖父アグラバインが「そうか…」と笑って礼を言った。
「主殿、お早く!」
風を操る彼女の切羽詰まった声が響く。皆がハッとして、アメルを促し、今度こそ彼女も頷いた。
「さぁアメル、ここから逃げるんだ。」
アメルと兄弟も同然のロッカが優しくも強く言う。アメルはふと違和感を感じた。
「一緒に…行くよね…?」
恐る恐る問えば、彼の眉尻が下がる。他の二人も似たような表情で、余計に不安を煽った。
「アイツは俺たちが食い止める。」
「お前はマグナたちと一緒に逃げるんじゃ。」
ロッカの双子の弟リューグと、アグラバインがそれぞれが武器である斧を構えてアイツ――黒騎士に向かい合う。ロッカも槍を構えてアメルに背を向けた。
「必ず迎えに行くから…」
「行けぇっ!!」
「うおおぉぉおっ!!」
三人が黒騎士に向かって駆け出す。それに合わせ、風を操る彼女がマグナのそばへ駆け寄った。
「申し訳ありません、あの黒の騎士だけは、その場から動かぬようにさせるのが限界でした。風も保ってあと2、3分です。」
「いや、充分だよ。みんな、行こう!!」
「いやっ!おじいさんたちをおいて逃げるなんて…!!」
たった三人で残ろうとする家族の元へ駆け出そうとするアメル。けれど、マグナとバルレルがそれを抑える。
「聞き分けのないこと言わないで!貴女が逃げなきゃ、あの3人のしたことが無駄になるのよ!?」
ケイナの厳しい声で、いくらかアメルが大人しくなる。それを機に彼女を半ば引きずりながら駆け出した。
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