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「ロッカ!リューグ!おじいさぁぁんっ!!」
アメルの悲鳴にも似た叫びを聞きながら、赤と黒に支配されたこの場所を駆ける。早く、早く安全な場所へと急きながら。
走って走って、足をもつれさせながら、それでも走って。追っ手もないことを確認し、街道の一角で野宿となった。マグナとアメル、バルレルにケイナはすぐに眠りに就き、見張りと火の番はフォルテとネスティ、それに今日召喚された彼女。
「すまないな…召喚して早々、こんな状況で…」
最初に口火を切ったのはネスティ。
「いいえ。お気になさらず…
よろしければ、あの惨状の経緯をお聞かせいただけますか?」
その質問に2人は表情を曇らせた。けれど、巻き込まれた彼女には知る権利がある。
「あそこはレルムという小さな村で、どんな怪我も病も治してしまう奇跡の力を持った聖女が住んでいた。」
「その聖女ってのが、そこで眠っている嬢ちゃんだ。アメルってんだがな。」
親指でクイッと示した先には毛布の中で丸くなって眠っている亜麻色の髪の少女。
「その娘を狙って、あの黒い兵士たちが村を襲ってきたのさ。火を放って、村人や、聖女を頼って来ていた怪我人病人をみんな殺してな………」
“虐殺”としか言えない内容に、思わず眉をしかめた。
いくらなんでも、村を壊滅させるなどやり過ぎだ。その方法でも、聖女を捕えることは確かに可能だが、他にも方法はあったはず。村人なんかを人質に自ら進み出させたり、密かに侵入し誘拐したり。
「非道な………」
苦々しく漏らした言葉に2人が頷く。
「偶然その場に居合わせた僕たちは、アメルを捕らえようとした兵士たちと戦って、彼女を連れて逃げようとしたんだが……」
「お前も見ただろう?明らかに格が違った黒騎士を。あいつのおかげで逃げられなくてな。俺たちも結構体力すり減ってて“こりゃマズい!”って時に、お前が召喚されたんだよ。」
いやぁ助かったぜ!
重い空気を吹き飛ばすように笑うフォルテに苦笑して、焚き火が消えないよう薪をくべた。
「そういやぁ、お前さんの名前はなんていうんだ?俺はフォルテだ。」
あんな状況じゃぁ自己紹介なんざできねぇからな。
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