第一話 赤と黒

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あぁ、そういえば主殿の名前も知らないな。と今さらなことを考え、名乗る。 「朔夜…土御門朔夜と申します。」 「僕はネスティ・バスク。ツチミカドというのが家名か?」 「はい。こちらの世界では家名が後に付くのですね。」 アメルやフォルテ、という名前を聞いた時に薄々とは感じていたけれど……彼らの姿も日本人とはかけ離れているし。 「あぁ。君はシルターンの者か?」 「…しるたーん……とは?」 ネスティに問われて首を傾げる。まるで聞いたことのない単語。おそらくはどこかの世界の名前だとは思うが…… 対して朔夜の反応にネスティは「まさか…」と冷や汗を流す。 「リィンバウムという名前に………心当たりはあるか…?」 「おいおいネスティ、リィンバウムを知らねえヤツなんかいねぇだろ。」 「ありません。」 「は!?」 緊張した面持ちで問うネスティを、フォルテがなにを当たり前のことを聞いてんだ、とばかりに笑うが、朔夜の返答を聞いて彼女を凝視する。ネスティはこめかみを押さえて大きな溜め息を吐いた。 「ロレイラル、サプレス、メイトルパ。これらにも…?」 頷くと、ネスティはさらに大きな溜め息を吐く。 「おいネスティ。俺にはちっとも話が見えねぇんだが……」 「……サクヤは四界のどれでもない、“名も無き世界”から召喚されたようだ…」 「「名も無き世界?」」 こちらの世界のことなどわからないサクヤはもちろん、召喚術に詳しくないフォルテが聞き返す。 「とりあえず、召喚術について説明しようか。」 順を追って説明しないと、わけがわからなくなるからな。 「僕たちが住むこの世界の名前は“リィンバウム”。そしてリィンバウムを取り巻くように4つの世界が存在するんだ。」 それが機界ロレイラル、鬼妖界シルターン、霊界サプレス、幻獣界メイトルパ。 そこまで言って、ふと思う。 「君はマグナ…あそこで寝ている馬鹿に召喚された時、少しも動じていなかったな?」 スヤスヤと気持ち良さそうに寝ている青年を指差す。朔夜の召喚主はマグナというらしい。
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