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「私の世界にも召喚術は存在しますから。呪文と魔力、必要なら媒介となる道具を用いて、契約した悪魔や天使、精霊や幻獣などを喚び寄せ使役する……極少数の一族にしか使えませんが。」
まさか人間の自分が召喚されるとは露ほどにも思っていなかったが。
ネスティが「ふむ…」と顎に手を当てて頷く。
「大体はリィンバウムの召喚術と変わらないな。違うといえば、召喚されてくる世界が決まっていること、召喚にサモナイト石という特別な石が必要なことくらいだ。」
「先ほどおっしゃられていた四界ですか?」
「そう。僕たち召喚師は四界の扉を開けて、その世界の住人を召喚する。マグナの隣りで寝ているのは悪魔のバルレル。サプレスの住人だよ。」
「……私は、全く次元の違う世界に召喚されたようですね。」
言うと、「そうだろうな…」とネスティが苦笑する。
「君は“名も無き世界”から召喚されたんだ。未だ解明されていない未知の世界から。おそらく事故で…」
「事故?」
「さっきも言ったが、召喚にはサモナイト石が必要だ。サモナイト石は5種類あって、それぞれの世界に対応している。」
言いながら、宝石のような5色の石――サモナイト石を取り出し、一つ一つを指差し説明する。
「黒ならロレイラル、赤ならシルターン。紫はサプレス、緑はメイトルパ。
そして無色透明なのが名も無き世界。けれどマグナは、紫のサモナイト石を使って君を召喚したんだ。」
「紫を使ったんなら、悪魔とか天使だろ?」
紫のサモナイト石は霊界サプレスの扉を開く石。フォルテの言うとおり、本来ならサプレスの天使や悪魔、精霊などの精神生命体が召喚される。
「状況が状況だったからな。ろくに精神も集中せず魔力を注いで、無理矢理こじ開けた扉が名も無き世界の中にある、君の世界だったんだろう。」
帰ったら課題追加だな。
呆れと怒りが半分半分といった表情で呟き、ネスティが再び頭を下げる。
「本当にすまない。名も無き世界から人間が召喚されるのは召喚事故の時だけ。君の世界への扉を意識して開いたわけではないから、君を元の世界へと帰すことは……」
「できない、のですね……?」
確認すると、ネスティは本当に申し訳なさそうな顔をして頷いた。それを聞いて「そうですか…」とだけ呟く。
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