君を抱きしめたい

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 夜明けの砂浜が紫に光る。空には海鳥が二羽、風に吹かれている。目の前には、引き潮に取り残された貝殻が転がっている。 「本当に楽しかった。」  君が溜め息を吐くように言った。 「ご免ね…」  君が選んだことだからきっと幸せになれると信じている。君のことを責めたりはしない。  僕達には夢しかなかった。それでも楽しかった日々が在る。どんなに愛し合っても、叶わぬ夢が在ることも知った。  今日を最後に君は彼の元へ行ってしまうけれど、君が笑顔で暮らす日々を信じている。  この前君から貰った手紙、何度も読み返した。そして、君の決意が固いことを知った。  朝日が昇る浜辺で、君の綺麗な横顔を見詰めると、何故か納得してしまう。 「さよなら…」  君がそう言う前に、君を抱き締めたい。そして、僕のこの恋を終わりにしよう。
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