マライアを聴きながら

2/2
前へ
/20ページ
次へ
 お気に入りのマライアを聴きながら、ハーブ・ティーを飲んでみる。今はこうして一人、貴方のことを想ってみる。  私の誕生日には決まって薔薇の花束をくれた。きっと最後まで優しい人なのだろう。  昨夜の電話は貴方からだと判ったけれど、私にはもう貴方と話すことはない。  眠れぬ夜に、マライアは優しく包んでくれる。窓から星を数えては、貴方との思い出を一つずつ消していく。  出会った頃は、こんな日が来るとは思わなかったけれど、若かったからなのだろう。 「もう済んだことよ。」  多分貴方は疲れていたのよ。心の拠り所を私に求めただけなのだと思う。  ハーブ・ティーが冷めていく。星が流れていく。マライアの曲が振り出しに戻る。 「同じ時間を重ねただけ…」  貴方が幻へ変わる。きっと私も貴方の幻に変わるのだろう。
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加