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一枚のメモ取り出し、二人が近寄ったのをゴーグル越しに確認した。
政宗は後頭部に手をやり、幸村は真直ぐ男を見つめ聞く。
「一週間この世界で鬼ごっこをする。2人以上が無事に逃げ切れこちら側が全滅したら願いを叶える」
「捕まればその場で即死してもらう」
「一般の鬼が30人と、選り抜かれた10人の鬼が用意されている。鬼は罪人探知ゴーグルを用い、付近の罪人を探索、発見し次第、追いかける」
「警戒音で多数の鬼にも気付かれてしまうと見ろ。尚、背負われたりして逃げることは禁ずる」
「殺人、もしその他の罪を犯してもお前らに課せられている罪は重くならん」
政宗も幸村も愉快な気分ではない。
滅茶苦茶だ、鬼の数が多すぎるとも思った。
何年も閉じこめられていたせいで身体が極端に鈍っている。そこそこした運動も、一週間と長い期間では意味をあまり成さない。
探知ゴーグル、というものも相当厄介なものだ。考えている二人に2つの拳銃が床へと投げられる。
「使え。初期装備5発」
告げられる鬼ごっこは、極端に残酷である。
「殺しあえ」というのだ。
王とやらは、どこまで悪趣味なのだ。
「失礼ながら質問を」
拳銃を拾いながら、声だけが響く。男は幸村を見やった。
「遊戯に参加するのは某らだけではないはず」
政宗は心の内で毒づいた。
「別の場所から出される。長曾我部元親、毛利元就は処理待ちだ。対しては「死刑」に値する罪を犯してはいない」
長曾我部元親と毛利元就はまだこのゲームに参加してない。
なら今佐助は一人で行動している。政宗は顔をしかめた。
政宗には佐助を助ける義理はない。
だが、参加していない2人が来なければ、この3人の内2人がやられれば終了だ。
幸村は顔をあげた。
表情は嬉しそうな笑顔だ。幼さが残りうる。先ほどまでの無の表情はない。
「報感謝いたす。では、」
笑顔から細められた眼が覗いた。
ぱん。
その笑顔は電気のようにぱちんと消し去られる。
同時になる銃声。鈍い音を立てて迷彩は倒れ伏せた。
弾は男の中心を貫いて。政宗の口笛が鳴る。
「…いきなり殺っちまうたぁ」
「逃すとでも」
「いんや」
「佐助を探さねば」
「Okay」
幸村の顔に、色はない。
倒れている男を仰向けにひっくり返し、懐から出た通信機のようなものを取り出した。
赤いボタンを押すと、ピッと機械音が鳴る。
「何だ?」
「何、ちょっとした余興にございます」
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