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「今何時だ」
「午後十一時半」
幸村と政宗は大きい会社のビルらしき建物の間に潜み、息を堪えていた。
一応今までは一回も見つかっておらず、逃げきれている。しかし、幸村の心持は晴れない。
「…佐助」
「へいへい分かったっつの。まだ死んでねーだろうよ、さすがによ」
「……それはそうだが…」
二人は一回も見つかっておらず、一回も一人の仲間に逢えていない。
こうも逢えないでいると、佐助はすでに鬼に殺されたんじゃないか、とまで考えてしまう。
幸村はふるふると首をふり、まなざしをさらに鋭くさせた。信じろ。
すっと立ち上がった幸村に、政宗はやれやれとでも言いたげな吐息を漏らした。吐息というより、溜息に近い。
「Wait.探しにいったりすんなよ」
「そんなことござらぬ。ずっと座っていては足が疲れるでござろう」
「走り回るよりはましだろうが」
「足が痺れます故」
「あーあーそうかい。…なぁ、それより…、」
それより、の先は政宗の口内に飲み込まれることになった。
隻眼を大きく見開き、驚きと恐怖に幸村を凝視している。意味が分からない幸村は眉をひそめた。
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