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市は追いかけてきていない。
倒れたあのまま二人の追いうちは他の鬼へと任せきったらしい。
もともとこのスタミナを大量に消費するゲームは、か弱い女性には向いていないのかもしれない。
幸村と政宗はまだ走っていた。
市を撒けたとしても、角から角からわらわら出てくる鬼は後を絶たない。武器はまだ使ってこないとしても、捕まったら死ぬことは目に見えていることだ。
だったらなおさら走らなければならない。政宗も幸村も根源は足が速いため、すぐに距離は開けられる。
銃を使うことも考えたが、ここは密集地と見た。銃声によって気付かれるかもしれない。
「……!今…」
しかし、その銃を誰かが使った音が聞こえた。ぱんぱんと数回の銃声が耳を揺るがして消えた。
幸村は途端、よからぬ不安が胸をよぎったのを感じる。政宗も一瞬横目で辺りを確認したようだった。
その銃弾に血が飛んだか、飛んでいないかは分からない。撃ったのは己ではない。
走りながら耳を澄ませた。
銃弾が聞こえると言ってもこの地は非常に広い。大きな都会都市くらいはあるだろう。
鬼ごっこのためだけに作られたと思えば相当たちは悪いものだが。
銃弾が聞こえる距離に誰かがいると思っていい。
ぱん。
また一発聞こえた。その瞬間、幸村はぴたりと走っていた足を緩やかに停止させる。政宗が振り返った。
「おい、何やってん、」
最後の言葉を政宗が言いきる前に幸村は今までの反対へと身体を反転させる。
歯を食いしばり、強く足を踏み込むと、角を曲がってその先へと消えた。鬼がつられて角を曲がって追いかけていったのも、見えた。
「shit!莫迦が!」
政宗は悪態とともに身をひるがえし、
幸村の消えた角へと走り出した。
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