カクセイ。

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ぽたんと血の滴が大地に吸い込まれ、薄い染みを作った。続けてぽたぽたと数滴。 隻眼の男は、血がどくどくと流れる右肩を押さえて目の前に立ちふさがる鬼を睨みつけていた。 向けられた銃口から、ゆらゆらと煙が立ち上っている。鬼の男がカチッと指を引き金へと素早く当てた。 「っ!」 勘は強い。自負している。身のこなしも軽い。自負している。ただ、右目が見えないリスクはある。自負している。 逸早く気付いた政宗は左方面へ身を投げ出し銃弾を交わすと懐に飛び込み、鬼の鳩尾を蹴りあげた。 その鬼がげほげほと咽こむ間に、後ろの鬼が引き金を引く。ちゅんっと掠った音を立て、政宗の横髪が数本宙へと舞った。 右肩は、油断していた。 あの後、角を疾走していった幸村の後を追っていった鬼を後ろから殴りつけ注意を引いたはいいが、その先の行動までは計算していなかった。 6人もの鬼相手に、一人の人間ができることなどたかが知れている。拳銃も容易に撃てない。初撃で利き手の肩をやられた。 「shit……うぜえ鬼がうじゃうじゃと」 鬱陶しいんだよ。 駈け出した政宗を見て鬼がぱんっと発砲した。だが外れた。あっという間もなく、鬼は右足の蹴りあげによってどざりと崩れ折れた。 振り向いた政宗の眼は、かつての殺気に漲られていた。鬼が戸惑う。こいつは一体何だ。 拳銃と素手。結果は目に見えていたはずだった。 しかしこんなにも鬼を手で退け、こんなにも手古摺らせている姿は異常だった。 「どうした、ほらさっさと来いよ。怖気付いたか?」 左目を細めながら言った言葉に、鬼がじりっと足を動かし惑った。 罪人は助かるために逃げる。だが、鬼とて同じだ。 もともとこれは王のお遊びにも似た気持ちで発動させられたシステムゲーム。王を楽しませねばならない。 だから鬼も必死に追いかけ、必至に捕まえようとするのだ。 唐突に放たれた銃弾が、今度は右腕の肘に入った。ぐっと政宗の表情が痛みによって歪まされる。 ぼたぼたと血が流れ落ちた。 「…また一人であの世行き、ってのは勘弁してほしいもんだ」 ぽつりと呟いた言葉は、無意識、だった。 走馬灯のように呼び出される、体験したはずのない記憶。 突然頭を支配する。 ああ、そうだ。確か、前もそうだった。俺は一人で死んだ。
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