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「<ハイ、こちらは──>」
思えば僕は、傲っていたのかもしれない。余りに上手く行く僕の人生に、自分の力を過信し過ぎたのだ。
数秒前までこの暗闇の中で鼻歌しながらバイクを運転していた僕が、今は恐ろしく憎い。
潮風が崖下から巻き上がる。それは散らばったバイクの破片を転がし、僕の何でもない擦り傷を冷たく刺激して過ぎ去っていく。
僕の目の前に、みるみるうちに液体が広がっていく。給油したばかりのガソリンにしては、あまりにも濃い色。
そんな景色が僕を襲う。いや、決してこの景色が悪い訳じゃない。
携帯を耳に当てて、それを一纏めの言葉にする。
……そう、僕は……
「人を、ハネました……」
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