第一章:崩壊より

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「じゃあ私は職員室に遅刻の報告に行くので、これで」 あいかはそう言ってニッコリ笑うと、そのまますったかたーと軽い足取りで階段を上がっていった。 職員室はここから2つ上のフロアの五階。 確か彼女に関しては教職員専用のエレベーターの使用が許可されていたはずだが、それでも一般生徒と同じく、自分の足で階段を登らんとする彼女は素晴らしいと思う。 【オモッテイルダケ】 多分、自分が同じ立場であったなら、迷わずエレベーターを使っていただろう。 さも、自分だけが与えられた優待権利とでも言わんばかりに。 【ナニモカモガクサッテイル】 「――ッ。また、か……」 ザザザザ、と。 先ほど食堂で聞こえてきたノイズが、再び頭の中に響きわたる。 疲れているのだろうか? 昨日はぐっすり眠ったはずだが……。 【キノウナンテナイ】 「――くそ」 いい加減、気分が悪くなってきた。 つい頭を押さえて呻きをこぼしてしまう。 「……さっきもですけど、現。本当に大丈夫ですか?」 「……どうだろうな」 心配そうに俺を覗きこむ美琴に、俺は大丈夫だとは答えなかった。 明らかに、大丈夫なんかじゃない。 でも、何だ。 何か、おかしい。 俺はこのノイズを。 あって然るべきものだと。 心の何処かで。 考えている。 「ちょっと頭が痛いんだ。でも、それだけ。あんま心配するな」 片手を振って、平気であることをアピールする。 「……そう、ですか」 美琴は何かを耐えるように唇を噛み締めつつ、結局そう言って顔を俯かせた。
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