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「じゃあ私は職員室に遅刻の報告に行くので、これで」
あいかはそう言ってニッコリ笑うと、そのまますったかたーと軽い足取りで階段を上がっていった。
職員室はここから2つ上のフロアの五階。
確か彼女に関しては教職員専用のエレベーターの使用が許可されていたはずだが、それでも一般生徒と同じく、自分の足で階段を登らんとする彼女は素晴らしいと思う。
【オモッテイルダケ】
多分、自分が同じ立場であったなら、迷わずエレベーターを使っていただろう。
さも、自分だけが与えられた優待権利とでも言わんばかりに。
【ナニモカモガクサッテイル】
「――ッ。また、か……」
ザザザザ、と。
先ほど食堂で聞こえてきたノイズが、再び頭の中に響きわたる。
疲れているのだろうか?
昨日はぐっすり眠ったはずだが……。
【キノウナンテナイ】
「――くそ」
いい加減、気分が悪くなってきた。
つい頭を押さえて呻きをこぼしてしまう。
「……さっきもですけど、現。本当に大丈夫ですか?」
「……どうだろうな」
心配そうに俺を覗きこむ美琴に、俺は大丈夫だとは答えなかった。
明らかに、大丈夫なんかじゃない。
でも、何だ。
何か、おかしい。
俺はこのノイズを。
あって然るべきものだと。
心の何処かで。
考えている。
「ちょっと頭が痛いんだ。でも、それだけ。あんま心配するな」
片手を振って、平気であることをアピールする。
「……そう、ですか」
美琴は何かを耐えるように唇を噛み締めつつ、結局そう言って顔を俯かせた。
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