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天蓋のついた豪華なベッドで寝ていた狼がもぞもぞと動いた。
薄汚れた体毛は漆黒、犬に似た四つ足の肢体は、しなやかで無駄がない。犬よりも鋭く厳しい顔立ちは、恐ろしいが野生の美しさを備えている。
しかし、この豪奢な室内には不釣り合いだった。
狼は、状態を反らすように伸びをした。
その姿は狼というより、巨大な猫のよう―――。
狼は、黄金色の両眼をパチッと開けると、ゴロンと寝返りを打って伏せの体勢になり、大きな欠伸(あくび)をした。
次の瞬間、狼は「アレ?」という感じで首を傾げた。
戸惑ったように、キョロキョロと辺りを見回す。
狼は立ち上がって、水から上がった時のように体をブルルッと震わせた。パラパラっと、高級そうな掛け布団の上に砂が散らばった。
狼は、散らばった砂をキョロキョロと確かめるように眺めた。
この一連の動作が、なんとも言えず人間臭い。
狼は、鼻をヒクヒクと動かして空気の匂いを嗅いいだ。
「すると、おや?」というように、狼は、カイトの隠れたドアの方に頭を向けた。
《おい》
肉声ではない声で、狼が言葉を発した。
《そこにいるんだろ?隠れても無駄だ…ニオイでわかる》
狼がニヤリと笑った。
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