話してはいけない

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「その夜の月は、鮮血を浴びたように真っ赤に染まっていた──らしいよ」  【夏実(なつみ)】は、出来るだけ低い声で長い話を終えた。  地元の大学に通う夏実は、週末の夜は仲の良い友人達と共に、このような都市伝説や、どこかで聞いた事のある心霊体験等の怖い話をし合っていた。  今夜集まっているのは、市の中心街に近いマンションの一室にある夏実の部屋。 1DKの洋室には四人分の布団が敷いてあり、先程まで話をしていた夏実は布団の上に胡座(あぐら)を組んで座っている。 「でも夏実、それってただの殺人事件じゃないの?」  夏実の話の後、先に口を開いたのは【佑奈(ゆうな)】だった。  怖い話が大好きな佑奈は下半身にだけシーツを掛け、俯せた状態で興味津々な表情を浮かべる顔を上げて夏実の話を聞いていた。 「焦らないでよ。この話にはまだ続きがあるの」  佑奈へと視線を移した夏実は、口の端を上げて話を続ける。
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