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ファミレスを出発してから三時間程が経ったが、佑奈達の乗る八嶋の車は未だ走り続けていた。
多くの車が行き交う街の舗装された道と違い、ここ三十分は対向車は無い。
道の所々にある凸凹とした膨らみや窪みが、通過する度に車に大きな振動を与えた。
少々前に通った何度も右に左にと大きく曲がる峠道によって、車内にいる佑奈達は車酔いを感じていた。
そんな都会の人間が普段中々訪れる事が無いような道を進み、山間部に位置する小さな町に辿り着いた。
町の一角には幾つもの田畑が並び、少しでも町中を外れれば山から伸びる木々が覆い茂り、土地勘の無い者が入ってしまえばすぐに迷ってしまいそうになる程の林が存在した。
かといって、驚く程の田舎だという訳ではない。
規模は小さいが、幾つかの主要施設があり、町の中央には様々な店舗が軒を連ねて並ぶ商店街もある。
ここに辿り着くまでに通ってきた道から、佑奈達が想像していたものよりは不便さを感じない。
勿論、都会の人間からすれば充分に不便なのかもしれないが。
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