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「着いたよ」
ヒートアップし始め、未だに健への文句を言い続けている朝香の言葉を遮るかのように八嶋が言った。
車の左手には、平屋建ての小規模の幼稚園が見える。
「それじゃ、行こうか」
八嶋の言葉と共に四人は車を降り、八嶋を先頭として幼稚園へと歩き始めた。
車を停めた場所から幼稚園の建物内へと向かい、園内の広場を通る時には、大人には小さ過ぎる小柄なジャングルジムや滑り台などの幾つかの遊具が視界に入った。
ふと、佑奈が携帯電話のサブディスプレイに表示された時計に目をやると、時刻は午後五時になりそうであった。
その為、園児達は既に帰宅しているのだろう。
辺りから人の気配というものは感じられない。
空を見上げれば、まだ日没には早いが灰色の雲が空一面を覆い、いつもより幾分か薄暗く、不気味な雰囲気を醸(かも)し出しているかのように感じられた。
「佑奈ちゃん、どうしたんだい?」
空を見上げて立ち止まる佑奈に八嶋が声をかけた。
その言葉に再び足を動かして八嶋達の元へと歩み寄る。
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