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建物の玄関口まで進むと、中から初老の女性が現れて佑奈達の元へと歩み寄ってくる。
八嶋はその女性にぺこりと小さく会釈をした。
「【盛岡(もりおか)】さんですか? 連絡させて頂いた八嶋ですが……」
「はい。立ち話もなんですから、中へどうぞ」
盛岡と呼ばれた女性に促されて、佑奈達も建物の中へと足を進めた。
中へ入ると、外にある遊具のように子供の小柄な身体に合わせた下駄箱がいくつも並んでいる。
こういった場所は、初めて訪れた佑奈達にも不思議と懐かしさを感じさせられた。
来客用の上履きに履き替え、長く伸びた廊下を歩く度にペタペタと上履きが床に当たる音を響かせる。
「それにしても、なんでまた十年も前の事件の事をお聞きに来られたんですか?」
「ははは、色々と事情がございまして」
突然の盛岡の問いに八嶋は苦笑いを浮かべ、頭を掻きながら曖昧な言葉で答えた。
当然ながら、「都市伝説の化物の正体を調べる為」とは言える筈も無い。
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