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「冴嶋さんと疎遠になった頃から、一ヶ月が経った頃でしょうか。
その頃になっては、私の中でも冴嶋さんが薄れていってたんですが、子供達の間に、おかしな噂が広まっていたのを知ったんです」
「おかしな噂?」
「ええ、どの子が言い出したのかは分からないのですが、一ヶ月前に冴嶋さんの家から真っ赤な男を見たって。
その男のせいで、陽太君がいなくなったんだ、って……」
「男、ですか」
「それで、どうしても気になってしまい、冴嶋さんの家に行ったんです。
電話をかけてみても留守電に繋がり、チャイムを押してみたのですが、反応はありませんでした。
しかし、何気無く扉に触れたのですが……扉には鍵がかけられていなかったんです」
十年前とはいえ、盛岡の頭の中には当時の記憶が鮮明に蘇ってきているのだろう。
話を聞いている佑奈達にも、徐々に盛岡の声が震えていくのがはっきりと分かった。
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