訪れた悲劇

12/16
前へ
/335ページ
次へ
「冴嶋さんと疎遠になった頃から、一ヶ月が経った頃でしょうか。 その頃になっては、私の中でも冴嶋さんが薄れていってたんですが、子供達の間に、おかしな噂が広まっていたのを知ったんです」 「おかしな噂?」 「ええ、どの子が言い出したのかは分からないのですが、一ヶ月前に冴嶋さんの家から真っ赤な男を見たって。 その男のせいで、陽太君がいなくなったんだ、って……」 「男、ですか」 「それで、どうしても気になってしまい、冴嶋さんの家に行ったんです。 電話をかけてみても留守電に繋がり、チャイムを押してみたのですが、反応はありませんでした。 しかし、何気無く扉に触れたのですが……扉には鍵がかけられていなかったんです」  十年前とはいえ、盛岡の頭の中には当時の記憶が鮮明に蘇ってきているのだろう。 話を聞いている佑奈達にも、徐々に盛岡の声が震えていくのがはっきりと分かった。
/335ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2698人が本棚に入れています
本棚に追加