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異様に暗い家の中、虫の羽の音が聞こえる程に静寂だけが支配していた。
外から吹きつける風がざわざわと木々を揺らし、不気味さを増していく。
その日の夜はいつもより幾らか薄暗かった。
怪訝な表情で玄関の壁に取り付けられたスイッチを押すと、天井から垂れ下がる電球が一瞬にして辺りを照し出す。
急激な眩しさに母親は顔を顰めた。だが、それは一瞬だった。
次の瞬間には、自分の表情がみるみる強張っていくのが分かる。
ある一点に、母親の視線は止まっていた。
玄関から入って右前方にある、二階へと続く階段から赤黒い液体が流れ落ちている。
──これは、血?
──誰の? まさか……子供達? それとも夫?
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