水と呼吸

服部

看護士達の話では、女の子が車とぶつかり意識不明の重体らしい。　どうせ自分には関係がない話だ。

「服部先生っ」

駆け寄ってきたナースを振り向くと、　

「外科部長がお呼びです」　

嫌な予感。

コンコン　
重厚な扉を二回程ノックしてから、失礼します、と声を掛け部屋に入る。　

壁一面が書棚になり、部屋の真ん中には大きくて偉そうないかにもといった感じの机が置かれていた。

「ナース達の話を聞いたか？」

黒い髪をワックスで後ろに流したトレードマークのオールバックが気に食わない。

予感的中　

「南野　花。22歳。わかっていることはこれだけだ」
内臓の損傷と車とぶつかった時に折れたであろう骨の被害がひどい。　

まあ、…外傷はこれにくらべたら軽いもんだな。

にやりと口の端をあげて笑うのが気に食わなかった。