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『ご案内』
短くそう書かれただけのメールはまたも続きを受信する必要があるらしい。ボタンを操作して先に受信を開始する。受信が出来る事で気付いたが、この辺りには電波塔があるのだろうか。見回した限りではそれらしき建造物は見当たらない。一体どこからと思ったが、受信が完了したので新しき疑問はまたも頭の片隅に追いやられた。クリックして内容を開く。
『このメールを読んでいるという事はゲーム参加という事ですね。ご参加ありがとうございます。
そしてようこそ、仮想世界(ヴァーチャルワールド)へ!』
仮想世界(バーチャルワールド)?
ゲームの世界にしては安直な名称だ、と普段RPGを中心に遊んでいる彼はそんな思考を真っ先に浮かべたが、問題はそこではないと気付く。
二段落目の『ようこそ』という文字から、自分は今までとは違う場所に移動させられたのだろうと推測すると同時に、一体どうやって、と疑問視するものの、推理物などはなからお手上げな彼には考えるのも億劫だった。思考を停止して次の文章へと視線を移す。
『さて、ゲームの内容をお伝えします。内容はいたって簡単。このゲームには最終ボスが居るので、それを倒してください。ラスボスを倒せばあなた達は無事元の世界に帰る事ができるでしょう』
一部分が目を引いた。『あなた達』、という単語だ。つまり、自分以外にも誰かが来ているという事になる。しかし、この場には見当たらない。相変わらず新緑のような平野と木々が広がるだけだ。人影が無い事に肩をすくめて、再び意識を手元に戻す。
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