ガラス越しの心

１，春。新入り

「これ、制服ね」

　店長から手渡された制服を見て正直げんなりする。何とも冴えないというか、お世辞にも誰も着たいとは思わないような制服だ。

「ここへは着替えてから来てもいいし、ここで着替えたかったらそこに更衣室があるから使って」

　間違ってもこの服を着たまま外は歩きたくないので常に更衣室を使うと思います、と言いたかったがもちろん我慢する。

「はい」

　私はこの夏からここでバイトをはじめる。先日行った面接の結果が昨日出て、一人就職活動で抜けた人の空きが一つあったらしく、なんとか合格できた。

　もうすぐ大学の夏休みが始まる。特にお金を稼ぎたいというわけでもないが、どうせ暇をもてあますことが多いのならバイトでもして少しくらいリッチになっても悪いことはないと思い、応募した。