序:ある日のある光景

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さて、何故、僕は追いかけられているのでしょうか? 少しでも状況を把握しようとコンクリートで塗り固められ、狭い道を照らす明かりが月光しかない路地裏を全速力で走りながら自分に質問してみる。 まぁ、自分に質問してみた所で状況は把握出来ないのだが。 よし、勇気を出して僕を追いかけている『それ』を見てみよう。 そう思い立ち、僕は後ろを見てみる。 何本もある足をモゾモゾとせわしなく蠢かせ、何個もある目は獲物である僕をギョロリと睨み、無脊椎動物であるソイツは誰が見ても、『クモ』と言うだろう。 でも、コイツはクモであってクモでない。だって大きさが三メートル位あるもん。気持ち悪っ! ああ、なんか足が疲れてガクガクしてきた。運動あんまりしてないからな。基本、家に引きこもるし。 わお。駄目人間街道まっしぐらだね、僕。 でも、真性の駄目人間になる前に死んじゃいそうだけど。アハハ。 クソ、こんな事になった我が愛しの元凶よ、早く助けに来やがれ! てか、やべぇ、クモがもう、すぐそこに居るよ。アハハ、ちょ、本気で死ぬかも……。 もうちょっと生きたかったなぁ……。 そんな考えが頭をよぎった直後、後ろで轟音が響いた。
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