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一瞬、その子と目が合った。
凄く、悲しそうなそんな目で…僕は思わず一瞬息を飲んだ。
だって、その子は体中、傷だらけで…僕とそんなに年も変わらないくらいだった。
それだけは凄く鮮明に残ってる。
「何でかな…」
不思議で、不思議で仕方がない。
それに一番不思議なのはその子の事を僕は昔から知っているようなそんな感覚があったから。
「(それにあの子──)」
──ズキンッ
「いっ……!」
また全身に刺すような痛みが走った。
そして頭を過ぎる女の子。
『…ぃ…や……』
「?」
『美…依弥……』
「………っ!!」
ハッキリと聞こえた。
僕の名前を呼んでいる、女の子。
『トビラヲ…ヒラケ…』
「と…びら…」
また聞こえる声は女の子じゃなくて凛としてる男の子の声。
──カタン
机の方向から音がして僕はふらつきながらそこに行く。
行かなきゃいけない。
僕は、行かなきゃダメなんだ。
そう思った。
「……水晶…?」
机の上に転がっていたのは虹色に光る小さな水晶だった。
それは凄く神秘的な光を帯びていて、綺麗だと思った。
それを覗き込むと"言葉を唱えよ"と浮かんでいた。
「言葉……?」
そう呟くとまた、水晶に言葉が浮かぶ。
──七色に輝き、空に架かる橋に願いを込めよ。──
「…七色に輝く…arcobaleno」
僕がぽつりと零した言葉に水晶は強い光を帯びて、僕はたまらずに目を瞑った。
光がおさまり、目を開けると…そこは、僕の見たことのない世界だった…。
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