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その日、昼間のテレビではニュースキャスターが今年一番の真夏日だということを伝えていた。 うだるように暑い日の17時45分に、僕は、昭和初期をイメージしたであろうレトロなフォント使いが懐かしさを感じさせるキリンビールのポスターが壁に貼ってある、薄暗くカビ臭い大衆居酒屋の入り口から一番遠くに位置するボックス席で、ブライヱン・バートン・ルイスと対面していた。 「物質が安定を求めて化合するように、僕らはツガイを作る。つまり愛しあってるという状態は、2つの物質が化合し安定してるようなもので、ツガイをなすものが、パラジウムと酸素だろうと 女と男だろうと果たして違いはないんだよ。」 その鷲鼻の男は、まるで僕の目の奥に何かとびきり珍しいものでも見つけたときのように、大きく見開いた目で僕を見据えながら、はっきりとした口調でそう云った。
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