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透き通るような白い白い肌に紅い紅い雫が滴り落ちる。
「……。」
「あなたは…ずるいですね。悪魔だからどこへでも飛べる…どこへでも…僕は…ただ…翼が欲しかっただけなんだ…」
「そのために奴らに魂を売って…人を殺したのか?」
彼方に向けられた瞳に光を宿さないままうたうように続けた。
「僕は…そうするしかなかった…そうすることしか…できなかった…だって…僕は弱…いから…」
「……。」
「でも…もうこれで……僕は…た…自由…翼…を…」
それっきりうたうのを止めた。蝋人形の笑みを浮かべたまま。そして糸の切れた人形は動かなくなった。
残されたのは紅い静寂と銀色の月と…
やがて静寂に風が吹いた。
「そんな翼なんかに頼らなくても人は自力で飛べるもんさ…翼がなくても…な。」
その風は冷たく吹き去っていった。
まだ温かい傷だけを残して…
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