灰食

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そこには体を真横から喰われているおばさんと恐怖で硬直してしまっているリョウがいた。 「どうした!大丈夫か?」 父さんはリョウを抱き一生懸命に体を揺すった。 もうおばさんは喰われてしまって、バケモノの口から腕だけが残っていた。 「ダメだ!父さん!逃げよう!」 「カズキは?カズキはどこだ?」 リョウが震えながらベランダを指差した。 そこには真っ赤に染まったベランダの手摺りとカズキを喰ったであろうバケモノが部屋に入って来ようとしていた。 俺と父さんは言葉が出てこなかった。 もうこのまま喰われてしまうのかと思ったその時、玄関の方から聞き慣れた声がした。 「誰かいるの?いたら返事をして!」 幼なじみのユイだ! 何十年も聞いている声だ。 「ここだ!バケモノが2匹もいる!」 声を絞り上げ叫んだ。 ユイは何かを叫びながら、部屋に入って来た。 「どいて!早く逃げて!」 そう言って俺を押しのけて持っていた消火器をバケモノに向かってぶちまけた。 「父さん!今のうちだ逃げろ!」 父さんとリョウを玄関まで引っ張っていった。 「ユイ!お前も早く来い!」
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