中学時代

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俺は早速生徒指導室に呼び出された。瀬戸嘉香と一緒に。(他にも数名いたが他クラスだから知らない) なんでこんなやつが髪染めてんだか…。 俺みたいな理由があるとは思えない。今どきの子みたいに自ら茶髪にするタイプにも見えないし。 他の奴らは自分の髪を染めて何が悪いとひらきなおっている。瀬戸は堂々としていて、なんだかここにいるのがおかしく思えてきた。 「全員揃ったな」 生徒指導の先生が最後に入ってくる。扉を閉める音と瀬戸の声が重なった。 「先生」 「ん、なんだ?お前は…」 「3組の瀬戸です」 皆の視線が瀬戸に集まる。 「私の髪は元々この色なんです。染めていないので帰っていいですか?」 確かに染めているという感じではない。先生も「それなら」と言って瀬戸を教室にかえした。勘違いで呼んどいて謝りもしない先生に、それでも瀬戸は笑顔で指導室を後にした。   嫌なやつ…   誰にでも愛想振り撒いて、そこまでいい子でいたいのか? ……俺の嫌いなタイプだ。       「お前らは染めてないなんて言わないな?」 先生が確認するように一人一人の顔を見ていく。…気持悪い。 「おいお前、聞いてるのか」 目をそらしていた俺の肩をつかんでくる。無理矢理向かされてむかついたから、俺は下から睨むように見かえした。 「俺は染めてる。だからってあんたに何か迷惑がかかったのかよ」 皆の視線が突き刺さってくる。思っていても、そんなことを実際に言うやつはいないだろう。 「話が終わった後お前だけ残れ」 乱暴に手を放した先生はそう言って俺から離れて行った。       だから嫌いなんだ。 誰も彼も。   俺自身すらも。
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