中学時代

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生徒指導の先生の話は30分強も続いた。(といっても他の生徒は10分程で解放されて、俺だけながったらしい説教を聞かされたのだが) 教室に戻るとすでに大半の生徒が帰っていて、残っていたのは瀬戸とその友達の女だけだった。 「おかえり不良少年」 「長~い説教お疲れ様」 教室の扉のところでとまった俺にひらひらと手を振ってくる。 …なんでいるんだよ。 聞こえないくらい小さく舌うちをして机に向かう。必然的に彼女たちに近付くことになる。 「周防君のは天然じゃないんだね。綺麗な色だけど」 髪のことだろうか。とりあえず話しをするきもないから無視。むっとしたのか瀬戸は唇を尖らせた。もしかしたらこれは彼女の癖なのかもしれない。そんなことわかったところで何があるってわけじゃないけど。 「ピアスいっぱいつけてるね。いくつ穴あけてるの?」 「……7つ」 左が5つで右が2つ。その中でピアスをつけてるのは3つだけだ。 「ふ~ん」 瀬戸が面白そうに左手でさらりと髪をもちあげる。白い耳に真っ赤なピアスが輝いていた。 「私はひとつだけ」 そう言ってにっこり笑うと髪をもとに戻す。耳をだしていないからピアスなんてまったく気が付かなかった。 「お兄ちゃんとお揃いなの」 俺は返す言葉が見つからずに瀬戸から目を放せないでいた。赤いピアスが強く脳裏に焼き付いている。 「誰にも言っちゃ駄目だよ。聖園もね」 「わかってるって」 立てた人差し指を口の前にもっていって、瀬戸はいたずらっ子のように笑う。けれど次の瞬間には泣きそうな顔をしてうつ向いた。 「お兄ちゃんね、昨年死んじゃったんだ……」 聖園と呼ばれていた女と目が合う。なんだか苦手な視線だ。 「こんな話してごめんね。…周防君がお兄ちゃんに似てたから思い出しちゃって」 見上げてきた瞳はかすかに濡れていた。俺は何も言うことが出来なくて、藍住(聖園の名字はたしか藍住のはずだ)の視線においやられるように教室を後にした。
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