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中学3年間。
誰かにはめられたとしか考えられない。俺はずっと瀬戸嘉香と同じクラスだった。名前も近いから、いつも出席番号が一緒という悪夢。夢ならさっさとさめてくれ。
表面上はそんな態度をとりながら、けど俺は瀬戸のことが嫌いじゃなかった。人のことにずかずか入りこんでくるし、いちいちうるさいし。それでも瀬戸の向ける笑顔が、俺は嫌いじゃなかったんだ。
…あの人に……似てるな。
そう思い始めたのはいつだっただろう。俺がまだ小学生だったときに救ってくれた人。
シンジさん。
暴走族総長で、けど優しくて、強くて、俺の憧れだった人。
3年なんてあっというまだ。入試だとか皆騒いでるけど俺は入れりゃどこでもよかった。だからとくに勉強もしなかったし、ただ何もせずに終わる日々をおくっていた。
あの日。
あいつらにからまれるまでは、本当に何もなかった。
「へー、お前があの学校しめてるとかいう周防か」
いちゃもんつけてきたのは他校の生徒だった。べつにあの学校をしめてるつもりはないが、喧嘩をふっかけてくるようなやろーもいない。同じ学校には。
「強えんだろ?俺らと勝負しろよ」
指をバキバキと鳴らしながらやる気まんまんなリーダー格の男。その後ろにはヘラヘラと笑う下僕4人。1人潰すだけでこの人数でくるんだから相当自信ないんだろうな。
「…めんどくさい」
「はあ?」
「なんだこいつ」
「立場わかってんのか?」
口々に言う下僕の間をすり抜けて行こうとしたら肩を後ろから捕まれた。ギリギリと爪がくいこんでくる。
「…放せよ」
「そんなんで放すと思ってんのか?ああ?!!」
下僕たちはすでに戦闘モードに入っていた。振り返った拍子に横腹に一発入る。
「……」
口内に胃液が広がったがここで手を出すわけにはいかない。手を出したら敗けだ。
「反撃もしねーよこいつ!!」
正面からおもいっきり蹴られて地面に倒れそうによろめいたところを後ろからはがいじめにされる。次々とくりだされる拳や蹴りの回数を、俺はぼんやりとした思考の中で数えていた。
…8……14…
……21………5…2
あー…こいつ何発目だっけ…?
数えきれなくなったころ、通りの反対側から警官が走ってくるのが視界の端にうつった。その後ろから同じ学校の制服を着た女がきて、俺を心配そうに見ていた。
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