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「嘉香、梨子は?」
「梨子?」
「今一緒に公園行ってただろ」
「…そうだっけ?」
「おいおい…まさかおいてきたのか?」
「…?」
嘉香は倒れそうになるほど頭を横に傾けている。本当にわかっていないときの反応だ。
「…ちょっと行ってくるから。嘉香は家で待ってろよ」
「うんっ」
「絶対一人で出てくなよ!!」
「はぁーい」
嘉香が家の鍵をかけたのを確認してから、俺は廊下を歩いてエレベーターホールに向かった。
嘉香が梨子を公園においてきたのは、今日が初めてではない。むしろ頻繁においてくる。
けれど梨子はまだ4歳で公園に一人放置することもできないので俺が迎えに行かなければならなかった。嘉香もべつに悪気があるわけじゃない。決してわざとではない。それは俺も梨子もわかってる。
「おーい、梨子!!」
「ぱぱ!!」
砂場で友達と遊ぶ梨子は声に振り向いて満面の笑みをうかべた。親馬鹿ではないけどめちゃめちゃ可愛いと思う。俺の愛娘だ。
「ままってばね、また梨子のことおいて帰っちゃったんだよぅ」
唇を尖らせた梨子はバケツから砂を出してそこにシャベルとスコップを入れた。お気に入りのお砂場道具には全部うさぎのイラストが入っている。
「でも梨子ね、ぱぱ好きだからぱぱが迎えに来てくれるの嬉しいの」
「ぱぱも梨子が好きだよ」
よいしょと梨子を左手で抱き上げて右手にバケツを持つ。梨子は楽しそうに笑いながら友達にさよならを言った。
「今日はね、健太君たちと遊んだんだよ」
「そうか~よかったな」
「うんっ」
にっこりと梨子が笑う。嘉香に、そっくりだった。
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