幻惑

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『ガチャ』 その時、部屋の扉が開いた。 「おっ!目ぇ覚めたのか!」 「よかったよかった」 次々に人が入ってくる。そこでお互いに我に返り、慌てて目を逸らした。 「おうっ、たった今起きたとこ」 裕二は何かを取り繕う様に慌てて説明をする。 「あ!あのっ…すみません!…わたし…気分が悪くて…」 ここへ来てやっと状況を理解し始めたが、まだうまく頭がまわらない。 ーー あたし…… 何が…どうなってんの? 「君、トイレで倒れてたんだよ!びっくりしちゃったよ」 状況把握が出来ていないことに気づいてか、スタッフの1人がそう言った。 「まさかあんな時間までトイレにお客さんが残ってるとはねぇ」 ギター担当の四川が呟く。 「かっこつけちゃってさぁ。裕二さん。無理してお姫様だっこするんだもん」 今度は女性スタッフが笑いながら呆れている。 「結局抱き起こせないんだから、世話ねぇなぁ。代表さん」 「ホント、ホント」 笑い合うベース担当の伍見とドラム担当の土井「代表」とは、ボーカルの千葉の事である。二人に茶化されて、千葉はうるせーよ!と返す。 「本当に、本当にすみません!」 改めて状況を理解し、ソファーに上体だけ起こすと慌てて何度もお辞儀をした。 「君ねぇ、もう元気なら帰ってくれる?本来、こんなこと絶っっっっ対、しないんだからね」 今度はまた別のスタッフが冷たく言い放った。
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