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「遠慮しちゃう気持ちも分かりますけど、こんな機械めったにないですし、せっかくのチャンスですもん。気にしないで楽しんだらいいんですよ!」
先ほどから味方してくれる女性スタッフが、美月に耳打ちしながらポンと肩をたたいた。
「え…あぁ、はい!」
ーー本当に…いいのかな…
夢でも見てるのかと思いつつ、恐る恐る裕二に目をやると、バッチリ目が合ってしまった。
「あっ…あの、厚かましいとは思いますが、お言葉に甘えて少しだけ、お邪魔…します!」
慌てて何度もお辞儀しながら何とか言葉を捻り出した。
「あはは。そんな堅苦しく考えないで、気楽に楽しんでくれたらいいよ」
裕二はそう言って、顔をくしゃっと崩して微笑んだ。
「あっ…ありがとうございます!」
ーー何て笑顔だろう。
ステージで魅せる千葉 裕二は、
こんな顔で笑うのか。
ステージでの笑顔や喋る姿は何度となく目にしているが、現実に目の当たりにすると一つ一つの動作に見入ってしまう。
するとまた、裕二は不快に思ったのか何なのか、スッと目線を逸らした。
ーー ダメだ!絶対変な女だと思われてる!
美月も慌てて目を逸らした。
「では皆さん行きますよ~!」
そうこうするうちに、一行に連れられ、美月はライブハウスをでた。
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