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「あ!裕二さん!」
マネージャーの正木が言った。振り向くと、裕二が酒を手にして立っていた。
「おっ!代表さん!今ちょうど、この子がほめ殺してたとこなんだ。代表として、今一度聞いたらどうだ?」
そう言って伍見は裕二の肩に腕をのせた。
「……いや、全部聞いてた」
酔っ払っているのか、裕二はそう言って不自然に目線を下にそらした。
「え!!!ほ、本当にごめんなさい!今のは全部忘れてください!失礼でしたよね!本当に本当にごめんなさい!!!」
まさか聞かれていたなどと考えもせず、恥ずかしくて顔から火がついた様に熱くなる。と同時に、自分の偉そうな感想にきっと裕二の機嫌を損ねてしまっただろうと必死に謝った。
「……え!?いやいや、失礼とか思ってないよ!」
裕二はぱっと顔をあげ、慌てて強い口調で否定した。その慌て方に、皆キョトンとしてしまう。
「あぁ……いや、その…」
今度は裕二まで口ごもってしまう。
「照れてんのか代表!」
伍見が裕二の頬をつつく。
「えっ!?いや、そんなんじゃねーよ!」
微妙な表情のまま裕二はそう言って伍見の指を払いのけると、ゴホンと咳をひとつしてから、美月に向き直る。
「……ほんと、嫌な気分とかなってないから。むしろ嬉しかったよ。ありがとう」
裕二は優しい笑みを浮かべ、改めて手を差し出してきた。
「え、あ、その……なんか、すみません!」
軽くパニックになってしまう美月。
「…ね、握手」
裕二は急かす様に手をもう一度差し出してきた。
「あっすみません…」
慌てて手をあてがうと、裕二はギュッと握り返してきた。
体温が流れ込んできそうな、熱い手。
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