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ーー 私の愛した男。愛したバンドのギタリスト。あなたの一部が、私の全てだった。夢も愛も全て注ぎ込んだ。
身体だけを重ねて、シンクロしない心。でもそこから逃げ出したのは他ならぬ私なんだ……
…おい!
…?
…大丈夫か!?
えっ…と…私……
「おい、大丈夫か!」
何だか聞き覚えのある、それでいて心地の良い声がして、パッと目が覚めた。
見覚えのない部屋。大きな鏡が目の前に飛び込んできた。自分の情けない姿が映し出される。
ーー ここは……?
見渡すと、どうやら控え室の様な場所だった。
「あ、気づいた?」
その声で我に返った。
…………え?
我に返って、我を失いそうになった。横にいたのは、自分を魅了してやまない黒髪のボーカリスト、東京イミテーションの千葉 裕二だった。
「え…あ、あの…わたし…」
「良かったー!目ぇ覚ましてくれて。トイレで人倒れてんだもん。まじビックリしたわー。あ、とりあえず水分取った方がいいよ」
そう言ってミネラルウォーターを差し出す裕二。理解できずにぽかんとしたまま、取り敢えず受け取る。
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