憎悪其れを越して

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憎悪すら越えた感情。どうでもいい。 転校先の学校ではそんな風に、俺はなげやりになった。途中からいきなり入って来た俺には誰一人として話しかけてこない。 この唖楚南中学校は、六世業をしたい子供が六世業をする為にいる学校だ。 六世業とは、永界という死後(?)の世界で、そこの人間や神様のお手伝いを密かにしたりする、武士や忍者のような仕事。 俺はそんなの真っ平御免。だから劣等生をやってる。 欺き隠れの術だとか、こんなつまらない授業、やってられっかよ! 今は算法利用術の授業中。 場の総合的なベクトルだとかに合わせた作戦を練る事のお勉強だ。 まあこの学校はそういう感じで普通の学校より進んでるっぽいけど、俺はやる気がないからちゃんとやらない。 綱渡に其れを応用しろという課題だ。俺は遅いからという理由で最後。 はは、プライドもクソも俺は言えねえんだよな。 下手くそだから。 「埜須見ー」 俺の番がやってきた。俺はちょっとだけやる気を出してみる事にした。 台の下はグラウンドの固い土。 ああ、きっと俺はまたあの固い地面に頭をぶつける事になるのだ。 棒も持たずに渡るのは至難の技。況してや俺。出来る訳ないけど―――――、 ゴッ 落ちた。やはり落ちた。 上の方で皆が笑ってる。ムカつかない。どうでも良かった。 「埜須見、いい加減本気になったらどうだ。」 生玲嗚(おれお)という教師が呆れたようにいう。 最初は怒鳴っていたけれど、俺に関しては諦めてしまったようで、もう怒鳴る事はない。 俺が無抵抗で皆に笑われているのを見て、先生はため息をついた。 「仕方ねえな、来い。」 「!へーい…。」 初めてだった。先生から声をかけてきたのは。だから、少しびっくりした。 でも態度には出さない。 「お前等はあっちの罠付きハードルをやってろ」 先生は他の生徒にそういうと、俺に無理矢理長く重い鉄の棒を持たせた。 「なんすか、これ。」 先生は腕を組んで言う。 「お前が一向にやる気を見せてくれないからな。親父さんからのお願いで、特別に。優等生になれっちゅう訳じゃねえからやってみろ。」 かなり重たい。キツい。こんなもの持たせて、何の意味があるんだか…。 「こいつ持ってそこあるけ。」 「、は?」 今きっと俺の目は丸くなってると思う。 というか、先生待てよ!こいつ持って落ちたら俺潰れるだろ!
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