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「やっぱり、アルくんはいい人だなぁ~」
「お前の荷物全部持ってるもんな」
二人はマーケットを後にして、螺旋階段を上っている。
軽快に駆け上がるシャムに対し、前が見えないほどのお菓子を両手で抱えながら、一歩一歩確かめるようにゆっくりとアルは階段を上る。
「こんな小さくてか弱い子にそんな一杯の荷物を持たせるの?それでも男なの?」
「言っておくが、お前も男でしかも年上な」
そんなツッコミは無視して更に速度を上げて、アルの前に立つ。
「何だ?今は跳び蹴りは止めろよ。流石に生きて帰れる気がしない」
シャムはその言葉を聞いても、ただ満面の笑顔でアルの顔を覗き込んでいる。
「でも、持ってくれるんだね?」
「ん?……まぁ、その……何だ……何となくだよ」
そう言いながら、シャムの真っ直ぐな視線から逃げるように階段を駆け上がっていく。
「……可愛いなぁ~。アルくんは。
お~い!ちなみに、僕の部屋ここだよ~!」
「言うのおせぇ!」
ツッコミながら反転すると、少し紅潮した顔で先程上った階段を一気に下ってくる。
「ふぅ……じゃあ、もういいな。明日に備えて寝たいんだ、俺は」
両手一杯のお菓子を地面に置くと、そそくさと階段を下っていく。
「また、よろしくね~!」
シャムのその言葉に、ただ後ろを向いたまま手を降って姿を消した。
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