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「アルさん、シャムさん。到着しましたよ」
体を揺すられて意識を取り戻す。そこには馬車を操っていたダークが立っていた。
いつの間にか、馬車の揺れにつられて二人は車内で寝ていたのだ。
「ん……あぁ。うわ……何とも間抜けだな」
一足先に起きたアルが、前を見て若干引き気味に言う。
その視線の先にはお菓子を口いっぱいに頬張ったまま眠るシャムがいた。
「おい、起きろ」
「ううん……モグモグ」
「寝ながら食うな!」
シャムの脳天にアルの必殺チョップが直撃する。
「ぶっばぁ!はれ?僕は何で生まれてきたんだろう?」
「知るか!いいからしっかりしろ。もう着いたぞ」
半分夢の世界に行っているシャムを置いて外に出る。
いつの間にか時間が経っていたらしく、日はアル達の頭上から容赦なく光を照らしつけていた。
馬車を降りた先に広がるのは大小様々な建物。レンガ製が主流のようで、辺りの建物や道ですら、ほぼそうなっている。
人通りは大通りから外れているようであまりない。
だが、少し耳をそばだてれば街特有の喧騒が聞こえる事からあまり離れてはいないようだった。
「ここが、王都グラナド……」
「来るのは初めてですか?」
少し呆けた表情で辺りを見回していたアルにダークが話し掛ける。その背中には、静かに寝息をたてるシャムが背負われていた。
「いや、任務では何度か来たが……。いつも夜だったし、こうやってしっかりと見た事は無かった」
「そうですか。ここはいい街ですよ」
そう言いながら片手でフードを取る。
藍色のセミロングな髪が靡きながら現れ、そこから顔を覗かせたのはやや垂れ目な優しい青の瞳、白く美しい肌、血色のいい程よく膨らんだ唇を持つ若い女性。
そのあまりの美しさにアルの口も開いたまま固まっていた。
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