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「あの…ありがとう」
先輩方から見えなくなった頃、少女は呟いた。
私はハッと振り返る。
先ほどは少し遠かったのと妙な懐かしさで気づかなかった。
…何と美しい声だろう。
美声とはまさにこのこと。
「…お礼なんていいわ。それより、怪我とかはしてない?」
「あっ…うん」
少女は頷いたが、表情は暗い。
やはり怖かったのだろう。
「もう、大丈夫よ」
私はそっと少女の肩に触れた。
その瞬間、少女の体がビクッと跳ね上がる。
私は慌てて手を離した。
「ごめん。……行こっか、ホントに入学式始まるよ」
言って私は、先を歩いた。
少女が、後を追ってくる気配がしていた。
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