第一節

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「あの…ありがとう」 先輩方から見えなくなった頃、少女は呟いた。 私はハッと振り返る。 先ほどは少し遠かったのと妙な懐かしさで気づかなかった。 …何と美しい声だろう。 美声とはまさにこのこと。 「…お礼なんていいわ。それより、怪我とかはしてない?」 「あっ…うん」 少女は頷いたが、表情は暗い。 やはり怖かったのだろう。 「もう、大丈夫よ」 私はそっと少女の肩に触れた。 その瞬間、少女の体がビクッと跳ね上がる。 私は慌てて手を離した。 「ごめん。……行こっか、ホントに入学式始まるよ」 言って私は、先を歩いた。 少女が、後を追ってくる気配がしていた。
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