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確か…同室なのは、山川瑠梛さん。
部屋を見回すと、窓際には二つの机。
私は机の脇に荷物を見つけ、その前で座った。
自分の荷物であることを確認し、それを開く。
「……“山川…瑠梛”?」
ふと、手を止めた。
聞き覚えのある名前。
そう、確か…
“彼”が言っていた…。
「…何て境遇かしらね」
思わず笑いが出た。
まさかよりにもよって、“例の少女”と同室になるなんて。
今のその子がどうなっているのか、観察して伝えてあげるのも悪くないかも知れない。
“彼”自身が望めばだけど。
考えていると、部屋の扉が開いた。
同室の子の登場かな?
振り返ってみると、今朝出逢った少女。
「あ…」
二人揃って声をあげた。
「…貴女だったのね、山川さんって」
私が微笑みかけると、少女は目を丸くした。
「私の名前…?」
「あら、見ていないの?数日前に配られた資料に部屋番号と同室者の名前があったでしょう」
「………」
穏やかに言ってみせると、少女…山川さんは考え込んだ。
見ていなかったのね。
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