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†
同室の人、海野光さん…。
印象はいい人だった。
優しく落ち着いた雰囲気に、とても気高い、圧倒的なオーラ。
私なんかとは、絶対に釣り合わないような。
だけど、逢ったのも今日が初めてなのに、何だか懐かしい気がして…。
「…貴方なら、こう言うかな」
『非科学的だ』と。
“彼”なら吐き捨てるだろう。
そしてその上で、大丈夫だよ、と、抱き締めてくれるだろう。
その“彼”は、もう私の前に現れることはないのだけど。
でも…それでも、
「また、逢いたいよ…」
逢いたい……。
たった一人、貴方だけに───
気が付くと、涙が溢れていた。
ぼろぼろと零れ落ちる涙は、拭っても拭ってもとどまることなく溢れてきた。
それからどうしたのか、私は外に居た。
寮の新館と旧館の間の中庭。
そこに…彼女が居た。
何か考え込んだ様子で。
「海野さ───」
声をかけようとした瞬間、私を見た彼女…海野さんが顔を上げて立ち上がった。
否、走り出した。
立ち上がりざまポケットからハンカチを取り出し、それを広げつつ私の前に庇うように。
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