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─────
「くっ……」
───一瞬、何が起こったか分からなかった。
何?
どうして海野さん、私の前で座り込んでるの?
左腕を押さえて…。
今、飛んできたのは何?
…矢?
私に向かって?
どうして…?
私はガクリと膝をついた。
頭が真っ白になる。
海野さんが何かを言ったのも、耳に入らなかった。
優しい手が、私に触れる。
…何だか懐かしい。
あの人の手と、同じ温もり。
あの人より小さなこの手が、今は私を守ってくれてるみたい。
パタッ…
…え?
その、小さな腕から流れ落ちる…
それは───
「ぃ……いやぁぁぁぁあ!!」
私は頭を抱えた。
思い出したくない、忌々しい記憶が脳裏にかすめる。
あの時の悪夢が、蘇ってくる。
また、涙が溢れて止まらない。
「…ち……血が…っ!」
私が絞り出した声に、海野さんは自分の腕を見た。
「…大丈夫よ。これくらいならすぐ治るわ。落ち着いて、山川さん」
なだめるように、海野さんの手が優しく私の背を撫でた。
ああ…やっぱりこの人、とても懐かしい。
以前(マエ)にも、どこかで…。
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