第一節

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どうしていつも、一番に彼の名前が出るのだろう。 いつも神崎に甘えてしまう。 恋人であるその人のことだって、ちゃんと好きなのに。 私はいつも、強い子だと言われる。 だけど、誰より私が、自分自身のことを分かってない。 「分かんないよぉ…」 震える肩を支えてくれる人は、今ここには居ない。 涙は出ない。 泣かないと決めた。 だけど私は強くない。 強くなんてなれない。 だって私は、本当は一人なんだもの。 怖くて、本気で人と関われない…ただの臆病者なんだもの。 私は眠る山川さんをそのままにして、部屋をあとにした。
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