第二節

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† 『美味しいね』 …あの人と同じ感想。 あの人と同じ戸惑った言い方。 頬を紅潮させて、必死に別の言葉を探しながら、見つからなかった時の言い方。 思わず笑みがもれた。 何だかむずかゆい気持ち。 …懐かしい感覚。 食べ終わって、海野さんと一緒に片付けている今でも、脳裏に残っている感覚。 ……逢いたい。 「………英次…」 ガシャンッ! 「っ…ごめんっ」 突然の音に驚いて振り返ると、海野さんが割れた皿を慌てて片付けていた。 「…海野さん?」 私があの人の名前を呟いた瞬間のことだった。 おかしい。 何かおかしい。 もしかして海野さんは、英次を知っているの? 「海野さ…」 「後…片付けておくから、先に行ってていいよ」 誤魔化すように言った海野さんを怪訝に見て、私はキッチンから出た。 世の中そんなに広くない。 海野さんが英次を知っていたところで、何もおかしいことはない。 だけど… 今の反応は、ちょっと過剰じゃない? 疑問を持ったまま、私は鞄を手に取った。 これから、居心地の悪い場所へ行く。 たった一人で…。
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