第二節

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† 『英次』 彼の名は、“藤沢英次”。 山川瑠梛の、中学時代の恋人。中学三年の春、学校の屋上から転落死した。 …表の記録では。 そう、私は彼を知っている。 そして、彼の死の真相も知っている。 山川さん…あなたはまだ、彼を想っているの? 彼に逢いたいと思うの? 教室に入った私は、昨日と同じく山川さんの表情が暗いことに気付いた。 それに、山川さんの近くには人一人居ない。 …嫌がらせ? 何にしても、気に入らない。 「山川さん、今朝はごめんね」 自分の席に荷物を置いた後、山川さんの隣に行って手を合わせる。 「あっ…ううん。海野さんこそ、怪我とかしてない?」 「ええ、平気よ」 そんな会話を交わすと、入り口近くに居た生徒に呼ばれた。 「そこの人、こっちへいらして下さいな♪」 「あっ、うん。…ちょっと行くね」 そう言うと山川さんは、暗く…とても暗く、微笑んだ。
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